幽霊船は大航海時代を筆頭に世界各地でその伝説が残っている。
最も有名な幽霊船伝説はフライングダッチマン号(さまよえるオランダ船)と思われるが、21世紀になった現代、世界中で有名になる可能性のある幽霊船がある。
名はリューボフ・オルロワ号。旧ユーゴスラビアで造船された船だ。
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1930年代にロシアで活躍した女優、リューボフ・オルロワの名を冠している。
ロシアのウラジオストクを母港にし、1999年に改装されてあらゆる場所へ航海できる耐久力を身に着け、2000年になると南極や北極などへのクルーズ船として活躍していたのだが、2006年11月27日に南極で座礁するなどの災難に見舞われるなどした。
2010年以降、船を所有する会社が債務不履行に陥り、従業員の給与が未払いの状態が続いたために51人のクルーは船を遺棄してしまった。
遺棄された場所はカナダのニューファンドランド島沖(セントジョーンズ港)。
カナダ政府は遺棄された船をドミニカ共和国へと運んだ後に解体することを決定したが、移送する最中に風速30mの嵐と高さ3mを超える波に襲われるなどして移送用のロープが切断され、カナダのアバロン半島の南東から東の方角へと漂流を始めた。
2013年1月28日、リューボフ・オルロワ号は海を漂う船となったのだ。
カナダ政府はガス田など海底資源採掘施設への船の接近を危惧してなんとかオルロワ号をコントロールしようと試みる。
その結果1月31日に再びさまよえるオルロワ号を捕獲するのだが、周囲に採掘施設が無く、風や海流の流れを考慮して今後漂流しても各施設が危険にさらされることがないと判断した海域まで船を運び、再び船を漂流させた。
カナダ政府は責任の所在に関して、
「船の所有権を有する者(船舶会社やそれが属する国)に責任があり、カナダ政府は船の監視を続けていく」
とした。
2013年2月4日時点でオルロワ号は北大西洋を彷徨っているとされていた。
しかし、2月23日になんとアイルランド沖約2400kmの地点に漂っていることが判明し、5日後の28日には約1300kmの位置(公海上)で沈没などの遭難時に発信される非常用位置指示無線標識装置による電波が発信されたことが確認された。
このことから、何らかの原因によってオルロワ号は大西洋に沈んでいったと考えられている。しかしイギリスの一部報道では、まだオルロワ号は沈んでおらず、船の中に大量に繁殖したネズミや不衛生な生物と共に海を彷徨っている可能性も捨てきれないとし、船がどこかの陸地に接岸した場合にはそれら生物が上陸して被害をもたらす可能性があると懸念している。
現代の幽霊船は果たして沈んでしまったのか、それとも海を漂っているのか気になるところであるが、今回の事例から考えられることがあるとすれば世界中の幽霊船伝説は意外にささいな出来事が原因となっているかもしれないということだ。