宇宙旅行が現実味を帯びてきた現代。多くの人が宇宙旅行に憧れるだけでなく、実際に宇宙旅行(無重力体験)を経験する人も出てきた。
そんな憧れの宇宙旅行、壮大な光景や未知の感覚が我々を待っているだろうが、実はとんでもない現象が人間に襲い掛かってくる。
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それが宇宙酔いと呼ばれる症状だ。地球上では、あらゆるものが重力によって地球に引き寄せられていて、仮に地面が存在しなければ、我々は毎秒9.8mのスピードで地球の中心に落下していくことになる。
一方、宇宙空間には重力が存在しない(月や衛星にはそれぞれの重力が存在する)。そして、人工衛星・宇宙ステーションが地球の軌道上を周回する際には重力と遠心力が釣り合うことで無重力状態となる。宇宙旅行が実現した時、宇宙船が何も無い宇宙空間を飛行している場合も同様だ。
人間が無重力状態におかれた場合、頭痛・吐き気・嘔吐を伴った宇宙酔いになりやすい。厳しい訓練を積んだ健康な宇宙飛行士でも60~70%が宇宙酔いを経験するといわれ、この原因こそが無重力なのだ。
人間の耳の奥には耳石器(じせきき)という器官があり、平衡感覚を司っている。これは地上で人間がバランスを保つのに欠かせないのだが、無重力空間では耳石器が機能しない。これによって人間は自身がまっすぐに立っているかどうかわからなくなり、脳が混乱することで宇宙酔いが発生する。
人間は地球の重力を前提に進化した生物なので、重力の無い宇宙空間に適応するのは決して楽ではない。
この宇宙酔いに酷似している症状が高山病だ。空気の薄い高地では頭痛や吐き気を催すことがあるのだが、同じ高度で数日間生活していれば体が徐々に適応していくことでも知られている。宇宙酔いも同様で、宇宙空間では耳石器に頼らず視覚で上下の位置感覚を掴めるようになり、徐々に宇宙酔いが克服できるという。
宇宙船に乗りながら美しい色を見て寛ぐというのは簡単ではないのだ。
現在の宇宙旅行はわずか数分の無重力状態であり、むしろ宇宙酔いよりも飛行機酔いの方が心配かもしれない。