月は人間にとって最も馴染み深い天体であることは間違いないだろう。
いつも空の上に当たり前に存在するこの天体は潮の満ち引きを司ることでも知られ、古くから人間の生活とも密接に関わってきた。
そんな月はどのように誕生したのか、今も解けていない謎がある。
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月の研究が進むにつれて学者達はある仮説を提唱し始めた。それが捕獲説と呼ばれるものである。
捕獲説とは、本来地球と月とは全く別の天体同士であり、月が偶然地球の近くを通った際に地球の重力に捕まり、それ以来月は地球の周りを周回する衛星となったのではないかという説で、地球と月の構造が大きく異なっていることが根拠の1つとなっている。その一方で、月と地球はかつて1つの天体であったという仮説がある。それが分離説と呼ばれるものである。
分離説とは、地球はかつて今よりも速い速度で自転していたと考えられ、その遠心力によって赤道付近が千切れて月を構成したというものである。しかし、地球と月の構造があまりにも違っていること、時点の遠心力で地球が千切れる可能性は少ないことからあまり支持されていない説となっている。
さらに近年登場した仮説として分離説に近いものであるが、その原因を地球の遠心力ではなく小惑星の衝突等といった大きな衝撃が加わったことによるものではないかという説が生まれた。
1975年にアメリカの学者が提唱したジャイアント・インパクト(大衝突)説である。
この仮説は地球の完成直前直後の時代に火星に近い大きさを持った天体が地球に衝突したというものである。マントルが剥がれたものの地球は辛うじて形を保ち、衝突によって周囲へと飛び散った地球と衝突天体の破片の多くは再び地球の重力の影響を受けて地球と1つになったが、一部の破片は地球の周囲を円盤状に周り続けた。そうした破片同氏が衝突を繰り返して月が誕生したというのだ。
つまり月は地球のマントルが主成分となって誕生した天体であり、月の岩石成分が地球のマントルと似た構造(金属が少ない)と似通っていることの根拠になるのだという。
そして地球の周囲に漂っていた破片が月になる過程をシミュレーションしたところ、約1年で地球と同じ形となることが判明している。さらに太陽系の1億年を同じようにシミュレーションしたところ月を形成させるレベルの惑星衝突が起きる可能性が高いという結果も出ている(1億年の間に必ず起きるわけではない)。
これらのことから現在は最も月の誕生に近い仮説として支持されている。同時に月面探査だけでなく月の核を調査することによってより月誕生の真相に近づくだろうともされている。