アメリカの財政問題に対する議論が泥沼化し、政府機関の閉鎖にまで広がっている中、アメリカ財務省をはじめとする政府関係者の間からデフォルト(債務不履行)を警告する見解が相次いだとロイター通信が報道した。
一説によると再び恐慌が発生した場合、リーマンショック以上の世界的な恐慌になる可能性もあるとして警鐘を鳴らす者もいる。
スポンサードリンク
米財務省は、米国債がデフォルトした場合に生じ得る経済への影響についてまとめた報告書で、債務支払い義務を履行できなければ米国は2007─09年よりも深刻なリセッション(景気後退)に陥る恐れがあると警告した。
財務省は、米政府がデフォルトに陥れば、借り入れコストの上昇や投資の抑制、成長鈍化などの事態を招き、何世代にもわたり経済に悪影響を及ぼし続けると指摘。
「デフォルトは前代未聞で壊滅的な打撃を及ぼす可能性がある。信用市場はまひし、ドルは急落し、米国の金利は急上昇しかねない」と分析した。
財務省高官は、議会が連邦債務上限引き上げで合意できず資金が底をついた場合、債務支払いを他の政府支払い義務より優先させることは不可能であり、オバマ政権はこうした方法には全面的に反対だと表明した。
議会予算局(CBO)によると、債務条件が引き上げられなかった場合には10月22日から月末の間に債務不履行を引き起こすとみられている。24日以降に特に大規模な支払いが控えているという。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、債務上限が引き上げられなければ米国だけでなく世界経済全体に打撃が及ぶ恐れがあると警告し、引き上げで早急に合意することが不可欠だと強調した。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのノワイエ仏中銀総裁も、「米国の経済成長にリスクをもたらす混乱が起きている。長引けば、深刻なリスクとなる。米経済の重要性を踏まえると、世界的なリスクとなり得る」と述べた。
サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は、政府機関閉鎖が比較的短期間で終結した場合、経済に著しい影響は及ばないだろうとした一方、米経済やドルに対する信頼感が損なわれることのほうが大きな懸念材料だと指摘。「資金が枯渇する前に債務上限問題に対処することが重要だ」との見解を示した。
ロイター通信より
与党民主党と野党共和党の争いが泥沼に陥っている現在、アメリカ国内ではせめて政府機関の再開だけでも早期に再開すべきではないかという声が広がっている。
また、アメリカ政府としてもデフォルトによる恐慌の誘発は避けたいと考えているはずだ。
もしデフォルトによって世界的恐慌となった場合、2008年のリーマンショックからわずか5年足らずの間に2度の世界的な恐慌の震源地となったアメリカに対する世界各国の不信感は歯止めが効かないものとなり、再び再生することは非常に難しい。それらの責任を追及する声は与野党問わずにアメリカ連邦議会全体に及ぶ恐れがあるため、責任回避としても有効な手段として政府機関の再開だけは早期に行われると考えられる。
一方、日本人である我々が個々に出来ることは、あらゆる状況で最悪のシナリオを想定することでデフォルトの際の影響を予測し、ある程度備えることである。リーマンショックの際に、多くの人や企業が右往左往したような混乱状態はあらゆる意味でマイナスにしかならないため、しっかりと資産の管理や株価や為替レートの動向を注視してしかるべき行動(保有しているだけでなく実際に動かす事)も必要になってくるかもしれないと頭の片隅にでも入れておくといいだろう(労働者という立場では、企業次第である部分がほぼ全てなのであまり意味が無いかもしれないが)。
ちなみに、このデフォルト危機の懸念を利用して利益を上げようとする動きが存在することも事実である。
デフォルトによる株価の大暴落の懸念によって多くの株が売りに出されたタイミングでそれらを買戻し、デフォルトが回避されたタイミングの株価の急上昇の際に売りに出し利益を上げようとする動きである。
そのような動きがある以上、デフォルトにならないという見方もできる。現に、株価の下落率や円高傾向を見ると、デフォルトの懸念を抱いている人は少ないといえる。しかし油断は禁物と言わざるをえない。なぜなら実際にリーマンショックの際は事前に察知している人はほとんどいなかったからである(当時の日本企業は直前まで好景気で沸いていた)。
今後我々に必要になるものは、自身の頭で考え、付和雷同することなくあらゆることを見極めることのできる知識と思考と行動力を持つことであろう。