人々が夢に描く理想郷。
そこに住む人々は笑顔に溢れ、毎日たくさんの美味しいものを食べ、争い事も無く平和に暮らしているとされる場所。
中国ではそのような理想郷を桃源郷という。
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そのモデルとされているのは、4世紀から5世紀(365年~ 427年)にかけて中国に実在した詩人、陶淵明が書き記した「桃花源記」である。
桃源郷
晋の時代、湖南省の武陵(ぶりょう)に男がいた。
ある時、川で船を使いどこまでも上流に行くと、突然両岸に桃の花が咲き乱れる場所にたどり着いた。そして桃の美しさに魅かれ、川の水源までたどり着いた男は、すぐそばの山腹に小さな洞窟があるのを発見する。
洞窟に入るとすぐに出口が見えた。そして男が見た光景は、家も田畑も立派で、人々が笑顔で働きながら暮らしている夢のような光景だった。
村人に話を聞くと、どうやらこの村の住人は秦の時代の戦乱を避けるために山奥に移住し、外の世界との関わりを一切断って暮らしているという。
男は村中の家を訪ねて外の世界の事を話した。
そして外の世界に帰る時、
「ここで見たことは誰にも話さないでほしい」
と懇願された。男は、その場では村の存在を秘密にすると約束したが、それを守る気など毛ほども無かった。
帰り道、木々に目印をつけながら自分の里に帰った男。
すぐ役人に謎の村の存在を報告し、目印を頼りに元来た川を上って行った。しかし不思議なことに、村の入り口はおろか、桃の木すら発見できなかった。
この話は道教の仙人思想と結びついている。つまり、桃源郷は仙人の住む場所で、戦乱の続く時代を生きる中国人が生み出した理想の世界なのだ。
桃源郷の舞台となったのは中国湖南省の武陵源(ぶりょうげん)や桃花源(とうかげん)と呼ばれる農村である。
どうやら、モデルとなった地域が武陵源
モデルとなった村が桃花源のようだ
平和に時間が流れ、多くの人が笑顔の桃源郷。今の日本では平和こそあるかもしれないが、人々の笑顔は程遠い。桃源郷は今も昔も、すべての人間の理想郷かもしれない。