ソロモン王は古代イスラエルを統治していた史実上の人物で、歴史の教科書でもその名を見ることが出来る。
巧みな政治力を使った統治を行い、古代イスラエルの強国としての地位を確立したことでも知られる名君である。
このソロモン王は数々の逸話を持つ人物でもあるのだが、中でも最も興味深い逸話といえば悪魔を使役していたという伝説だろう。
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伝説はいくつか存在し、72体もの悪魔を使役したという伝説や、堕天使ベリアルとその配下である約53万の悪魔を封印したという伝説、上位の悪魔とされる場合が多いベルゼブブという悪魔に土下座させたという伝説も持っている。
ある時ソロモン王がエルサレムに神殿を建設しようと考えた。
そこで上位の悪魔(蠅の王)であるベルゼブブを召喚する。ベルゼブブ自身も人間にいいようにこき使われることを嫌うのだが、ソロモン王の力の前に屈服し神殿の建設に協力することになったとされている(その際に何体もの悪魔も呼び出され、ソロモン王の命に従い働いている)。
ソロモン王がこれほどの力を持ったとされるには理由がある。
彼は天使や悪魔を意のままに出来る「魔法の指輪」と万物の知識が書かれている「天使ラジエルの書」を持っていたとされているからである。
そんなソロモン王でも悪魔使役に失敗してしまったことがある。
神殿建築の際にベルゼブブと共に呼び出された悪魔の中にアスモデウスと呼ばれる狡賢い悪魔がいた。アスモデウスはソロモン王に向かって
「ソロモン王など指輪が無ければ全くもって恐るべき人間ではない」
と言い放ち、ソロモン王は挑発に乗って指輪を外してしまう。
ベルゼブブはその瞬間に魔法の指輪を奪い、ソロモン王をエルサレムから追放した後に海に捨ててしまった。
もはや後の祭りとなったソロモン王は激しく後悔するが、偶然恋人であったアンモナイト・ナマハと呼ばれる人物が海で捕まえた魚の中から魔法の指輪を発見したことでで再び悪魔を使役する力が戻る。
イスラエルに戻ったソロモン王は早速ベルゼブブを封印し、その後2度と指輪を外すことは無かったという。
これらはソロモン王の力を誇示するための伝説とされているが、ならば何故天使でなく悪魔を使役したという伝説が残っているのか(悪魔よりも天使との関係を描いた方が民衆の心を掴みやすい)がわかっていない。
悪魔を制する者として自信を神や天使と同一視する思想を民衆に植え付けることが目的であったのか、フィクションとして後付けされたものなのか、それとも本当に悪魔を使役していたのだろうか。