アフリカやアジアに広く存在する砂漠。
膨大な砂があたり一面に広がり、まさに不毛の地という言葉が似合う。
そんな砂漠だが、南米ブラジルにはそんなイメージを覆す砂漠が存在する。
レンソイス水晶砂漠と呼ばれるその場所は文字通り水晶によって構成された砂漠である。
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水晶砂漠と聞いてイメージされるような、ゴツゴツした巨大な水晶が一面に転がっているわけではなくパウダー状の水晶で、一瞬見るだけでは砂と区別がつかない。
なぜこの砂漠は水晶によって形成されているのか。この砂漠が水晶で構成されるようになった理由は単純なものではなく、実に多くの偶然と過程が重なって誕生した奇跡的な光景なのだ。
砂漠の水晶は最初からその場所に存在していたわけではない。
水晶は砂漠から離れた山岳地帯に存在し、大西洋からの風によって少しずつ削られて完璧から地面に落ちる。
地面に落ちた水晶は砂漠から100km南に存在するパラナイーバ川の流れによって海岸に運ばれていく。
海岸は特殊な地形をしていて、満潮時には3km沖で船が座礁するほどに遠浅になる(サンドバーが大量に現れるようなもの)。その遠浅の海では満潮と干潮の差が激しい地域が多く、水晶は満潮時には他の砂と擦れあい、干潮時には大西洋からの砂と擦れあうことで形を丸く小さなものに変えていく。
それを繰り返すうちに固い水晶の部分だけが残り、水晶の砂が完成する。
小さくなった水晶の砂は干潮時に大西洋からの強風(風速90m)で砂漠の存在する方向へ飛ばされる。しかしこれは一気に海岸部から飛んでいくのではなく、実に少しずつ砂漠へ向けて移動していき、水晶の砂が海岸から砂漠へとたどり着く時間は、なんと数億年かかる。この現象は多くの要因が重なって成立するので、現代の技術では水晶の砂が砂漠に移動するまでの一連の流れを人工的に再現することは出来ない。
つまり砂の1粒ごとに壮大な地球の歴史があるといえるのだ。
砂漠に到着しても水晶の旅は終わらない。
砂漠には一定に風が吹き続けている。このため、今なお内陸に向けて最大で1日500mほど砂漠が拡大している。
そして最大の特徴として、レンソイス水晶砂漠では雨季(1~6月)の間にいくつもの湖が誕生する。
砂漠の下は粘土層の地層になっていて、雨季にしみ込んだ水が周囲よりも窪んだ場所に染み出すことで湖が生まれる。
砂漠に期間限定で存在する外界から隔絶された湖であるにもかかわらず、なんとそこにはヤゴや小さなカエル、さらには魚までが生息している。
この湖は周囲の川や海とは何の接点も無い砂漠のど真ん中に存在する。
それでも生物が生息できる理由も多くの偶然によるものだ。
現在有力視されている仮説として
本来は水生生物など生息していない湖
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そこに鳥が糞をする
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糞の中に魚の卵が含まれていた
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魚類は水が少なくなるなどの環境に適応し、カエルなどは水をしみ込ませた粘土層の砂の底で乾季を凌ぐ。
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このサイクルを繰り返す
このように実に絶妙な偶然が重なって水晶の砂漠はその絶景を保っている。
日本ではあまり知られていないこの絶景、行ってみる価値は十分ある。