オリハルコンという名前を聞いたことがあるだろうか。
日本では多くの人が小説やゲームの中でその名前を聞くことが多いオリハルコン。
これは幻の大陸に存在していたとされる物質なのだが、なんとそのオリハルコンがシチリア沖で発見されたというニュースが話題になっている。
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どうやらこの船は26000年前に沈没した貿易船と見られ、その中にオリハルコンと思われる39個の金属の塊が発見された。
オリハルコンとは
古の時代、ゼウスの怒りによって海の底に沈んだとされるアトランティス大陸。そこにはポセイドンと人間のハーフを祖先とする人間達が暮し、高度な文明と理想郷を築き上げていた。
アトランティス大陸の神殿等に使われていたとされているのが、希少な金属であるオリハルコンだ(オリハルコンとは日本読みであり、本来の発音はオレイハルコスに近い)。
そもそもアトランティス大陸の存在を提唱したのは古代ギリシャの哲学者プラトンで、彼は著書の『ティマイオス』と『クリティウス』という連作の中でアトランティスについて述べている。
『ティマイオス』でアトランティスは、当時エジプトの神官がかつて海底に沈んだ高度な文明を持った場所の話をした、というような間接的な表現で登場し、『クリティウス』では神殿を囲んでいる外壁はオレイハルコスの赤い光で照らされていたという記述がある。
このアトランティスの記述を信じる多くの人は、オレイハルコスはプラトンの創作ではなく、かつてアトランティスのみに存在していた金属であったと、アトランティスが海に沈むと同時に地上からその姿を消したと考えるようになった。
これが現在伝わっているオリハルコンの正体だ。
プラトンの生きた時代は紀元前400年代で、現在から遡ると約2400年前である。2400年前程度のことであれば今でもオリハルコンがあるかもしれないと感じるかもしれないが、エジプトの神官のいうかつてとは、プラトンの生きた時代から遡ること9000年前の話であり、アトランティス同様にオリハルコンの存在もはるか彼方なのだ。
オリハルコンは何らかの合金である(シチリア沖で発見された金属も75~80%の銅・15~20%の亜鉛・ニッケル・鉄・鉛が含まれているという)という説や、失われてしまった貴重な金属であるという説が飛び交うようになっているが、実際には実在したかどうかも判明していない(今から約12000年後の人々が、ハリーポッターに登場するアイテムが実在したと考えるようなもの)。
現代になり、オリハルコンという名前がファンタジー小説やSF作品に登場するようになると、そのイメージをそのまま引きずった人が増え、単なる鉱物ではなく不思議な力を持ったものとして認識されるようになっている(プラトンはオリハルコンについて特別なことは記していない)。
そんなオリハルコンとみられる金属の塊がシチリア島で発見されたというニュースであるが、仮に2600年前の貿易船がオリハルコンを積んでいたとするならば、今でもヨーロッパ中にオリハルコンが残っている可能性も高くなる(貿易に使用されるということは一点物でない可能性が高く、船で各地に運ばれて使用されていたと考えられる)。
シチリアで発見された金属はオリハルコンではない可能性が高く、または我々が知らない間に普通の金属名(合金等)で呼んでいるある意味でのオリハルコンかもしれない。