日本ならば日ノ本(ひのもと)、アメリカならばアメリゴ・ヴェスプッチが名の由来となっているように各国にはそれぞれ国名の由来が存在する。
そして、世界で最も注目すべき国家であるイスラエル。この国名もまた、ある人物の名前が由来となっている。
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ヤコブは旧約聖書の創世記に登場する人物であり、旧約聖書を読んだことがある人ならば名前くらいは知っているだろう。
しかし、旧約聖書は新約聖書のように頻繁に配布されていないなどの理由から日本ではあまりメジャーではない。
旧約聖書において重要人物であることは間違いないのだが、ヤコブの位置づけは少し複雑である。
旧約聖書の物語を辿っていくと、ヤコブはノアの方舟(はこぶね)で有名なノアの子孫にあたり、
ノア
↓
セム
↓
アブラハム(アブラム)
↓
イサク
↓
ヤコブ
といった感じになる。
ヤコブにはエサウという双子の兄がいた。兄のエサウは狩猟を、弟のヤコブは家畜の飼育を仕事としていた。
ある時、ヤコブはエサウを騙して長子の特権を取り上げてしまったために兄から命を狙われることになる。
兄から逃れるために、伯父であるラバンのもとに身を寄せようとしたヤコブは道中で不思議な夢を見る。
その夢は梯子を上り下りする天使の夢であった。
そしてヤコブはその夢の中で神の声を聞き、自身の一族が繁栄していくことを知る。
ラバンのもとで20年間暮らし、子供をもうけたヤコブは故郷であるカナンへ帰る決意をする。そして、その途中で天使と朝まで格闘した。
格闘が終わると天使は
「神と戦い強さを示したのだから、名をヤコブからイスラエルへ変えよ。今後はあらゆる人と戦って勝つだろう。」
といった。
ここで初めてイスラエルの名が登場するのだが、イスラエルとなったヤコブには12人の子供が存在し、それらの子孫がイスラエル12支族の始祖であると同時に、イスラエルという国の名前が誕生した(イスラエルの子の国という意味合いも含まれているかもしれない)。
イシャラー Isra(勝つ者)とエルel(神)の2つを合わせてイスラエルIsrael(神に勝つ者)という意味である。
イスラエルという名前、実は人間と天使との格闘というなんとも奇妙な出来事によって生まれた名前なのだ。
創世記の記述には、何者かが夜明けまでヤコブと格闘したと書かれているのだが、格闘の後にヤコブが何者かに対して「いいえ、祝福してくださるまでは離しません」と言葉を発していることや、先述したように「神と戦い強さを示したのだから、名をヤコブからイスラエルへ変えよ」「今後はあらゆる人と戦って勝つだろう」と何者かが述べていることから、その正体は天使であるとの見方が有力である。
ちなみに、天使と格闘した場所は現在のヨルダンに存在するザルカ川で、旧約聖書ではヤボク川とされているが、天使に勝ったヤコブによってペヌエル(神の顔という意味)という名前も付けられている。
そしてヤコブは後にエサウと和解している。
普段何となく聞いている国名だが、調べてみると意外な発見があるかもしれない。