ウジ虫はハエの幼虫として知られ、食べ物だけでなく時として死体に群がることもあるため、戦争を知っている人間にとっては不吉な虫である。
そんなウジ虫であるが場合によっては人間に対して直接的に有益な虫、益虫となる場合があることはあまり知られていない。
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そもそもウジ虫が好きという人はよほどマニアックな人か研究者くらいなものであるが、実はウジ虫は人間にとって益虫となり得るという意外な側面を持ち合わせている。
それはマゴットセラピーというウジ虫を使った傷の治療法である。
意外に知られていないことであるが、ウジ虫が寄生して食べるのは腐った肉(壊死した細胞)の部分だけで他の新しく生成された細胞は食べない。その習性を利用してウジ虫に傷の患部にある壊死した細胞を食べさせることにより、有害な細胞を根こそぎ取り除くことがマゴットセラピーである。
ウジ虫の出す液には、壊死した細胞の細菌を殺菌する効果があるため、結果的に感染症のリスクを軽減させることも出来る(既存の菌を殺すため、菌全体のバランスが崩れる場合もある)。
これだけを聞けばグロテスクな治療法である以外に(人によってはウジ虫が這い回ることも不快感を覚える)デメリットは感じないが、発熱やアンモニア臭が少しの間残るといった副作用も報告されている。
近頃はあまり報告されていないが、かつては治療後に皮膚の内側に隠れたウジ虫を見逃してしまい、ウジが体内に寄生してしまう事例があった。
日本ではあまり馴染みのないこの治療法、以前から兵士の間では知られ、傷口にウジ虫が湧いた兵士の方が生存確率が高かったことなどから、世界的にはポピュラーなものである。
ちなみに日本では一部の医療機関で実施されているが、保険適用外(自由診療)である。
エコが叫ばれるこれからの時代、環境に良い治療法という観点から、マゴットセラピーが脚光を浴びる日が来るかもしれない。