no smoking icon rgb for ser 500x500 タバコを止められない理由はニコチンと脳にあり!禁煙の効果。
2014年4月からの増税と共にたばこの価格が一斉値上げされるが、中には価格上昇と共に禁煙を考える人が多いだろう。

4月という時期は新生活が始まる季節でもあるため、心身ともにリフレッシュするという意味でも禁煙を目指す人が増加することが予想される。

しかし禁煙は実際に挑戦してみると実に難しいものである。

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そもそも禁煙が難しい理由はニコチン中毒で、喫煙者ならば全員が知っているであろう事実である。
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喫煙者の中には口ではタバコを止めなければいけないと語っているが実際には喫煙をやめられない人、健康に悪いことを承知の上で吸い続けてしまっている人が多い。

一体何故禁煙は簡単ではないのだろうか。そもそもニコチン依存の構造を知っている人がどれだけいるだろうか。

人間がタバコに依存してしまう理由はニコチンだ。ニコチンはタバコの葉の中に含まれる植物毒で、喫煙という形で摂取される量は依存作用にのみ影響する絶妙な量である。
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喫煙によって体内へ取り込まれたニコチンはタバコの煙と共に肺の中の肺胞へと届く。肺胞の周囲を覆う毛細血管の中にニコチンが入り込み、血液中の脂肪と合わさりながら動脈を通じて脳へと運ばれていく。脳の内皮細胞が異物として入り込んできた物質の侵入を食い止める役割を担っているのだが、脂肪と合わさったニコチンは排除されることなく脳の神経細胞に到達してしまう。

本来ニコチンは人体にに必要のない物質(脳内に存在するはずがない物質)であるが、ニコチンは脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンとよく似た構造であるため、アセチルコリン受容体がニコチンをアセチルコリンの代わりに結合させてしまう。
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アセチルコリンは最も基礎的な神経伝達物質であり、その働きは血流の調整や自律神経の伝達を司っている物質である。

通常アセチルコリンは分解されるスピードが速いため脳に対する刺激は長く続かないのだが、ニコチンは分解されることなく長い時間受容体に居座ってしまうために本来アセチルコリンよりも多い刺激を受容体に与え続けることになる。長期間の喫煙でこのニコチンによる過剰刺激が繰り返されると受容体の感度が大きく鈍くなってしまう。そのためアセチルコリンでは満足した刺激を得ることが出来なくなり、ニコチンによる刺激が必要不可欠になっていく。

タバコを吸い終わってしばらくすると再び吸いたくなるという現象はこのニコチン依存のメカニズムが原因なのだ。

喫煙を続けてニコチンの摂取が習慣になってしまうと、今度はニコチン独特の刺激が人体に影響を及ぼすようになる。この刺激がタバコ依存の原因である。

喫煙者がタバコを吸わずにはいられないという精神状態になる理由は、ニコチンによる新たな刺激にも原因がある。その刺激は大きく分けて2種類存在する。

1 脳の青斑核(せいはんかく)への刺激

青斑核が刺激されるとノルアドレナリンという神経伝達物質が放出されて脳の覚醒レベルが高くなる。これは喫煙を続けることにより眠気が少なくなるや集中力が高くなるといった現象として表れる。
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2 脳内報酬系への刺激

脳内報酬系とは側坐核(そくざかく)等の神経回路から快楽物質であるドーパミンを放出する器官のことで、この脳内報酬系への刺激によりドーパミンが放出されるために気分が変わるといった感覚や満足感に似た感覚を得ることになる。
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ニコチンにはさらに驚くべき作用があり、喫煙時のコンディションによってニコチンの作用が変化するという。

詳しい原理由は判明していないが、例えば眠気が強い場合には興奮剤として働き、イライラしている場合には怒りの抑制作用が働き気分を落ち着かせる効果がある。またタバコを吸ってから脳が快楽を感じるまでにかかる時間はわずか7秒であり、この即効性も禁煙が難しい理由の1つとされている。

誰もが初めて喫煙をした時にはタバコを良く感じないだろう。ほとんどの人がむせてしまったり、吹かすだけで肺まで煙を入れられなかったはずだ。これは器官粘膜の表面にある線毛による防御反応によるもので、タバコの煙を吸い込んだ際に煙に中に含まれる200種類を超える有害物質が線毛を刺激することで、有害物質が引っかかると同時に体外に排出されようとする働きが原因の違和感である。
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しかし常習的な喫煙によってタバコの効果が表れ始め、最初に感じていたタバコの不快感よりも快楽を強く感じるようになり、同時に喉の刺激に対する反応も鈍くなってしまい不快感を感じなくなってしまう。喫煙を繰り返し、眠気が取れたという感覚やイライラが治まったという感覚を学習してしまうと喉の不快感よりもタバコ効果が優先されてしまう。そっしてタバコの有害物質には線毛の働きそのものを悪くしてしまう物質も含まれている。
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タバコによる刺激を受け続けると線毛の働きが鈍くなる。つまりタバコでむせなくなる理由(常習的な喫煙が可能になる理由)は慣れや強靭な精神などではなく、ただ線毛の働きが鈍くなっただけ、免疫が低下したからなのだ。タバコを吸える理由は体がタバコの合わせて悪くなったからということになる。

これらをまとめるとニコチン中毒とは

・ニコチンがアセチルコリン受容体と結合して興奮や抑制といった効果を脳が学習する
・アセチルコリン受容体の反応が鈍くなって脳がニコチンの刺激を必要とする
・体の反応が鈍くなり、欲求に応じた喫煙が可能になる

ではこのような症状になってしまった喫煙者はどうすれば禁煙できるのだろうか。

最初に必要なことはいきなり禁煙することではなく、禁煙によって体に起こる変化や多くの人が体験する壁を事前に知ることである。

禁煙を行うとほとんどの人にいくつかの共通した症状が表れる。しかしそれを乗り越えることが出来れば高い確率で禁煙が成功する。

禁煙をすると時間が経つにつれて体内に色々な変化が起こり、その理由を理解することが第1歩となる。

禁煙に挑戦して失敗した人の禁煙継続期間は1日が25%2日~1週間が12%1週間~2週間が28%2週間~1ヶ月が15%1~3ヶ月が14%3ヶ月以上が4%で、誰もが同じ時期に失敗しているのではなくある程度のバラつきがあることが判明している。

失敗する時期に人それぞれバラつきがある理由は禁煙による体調の変化に段階があるためだ。

禁煙1日目にはニコチンが体内に入ってこないことによって強い禁煙欲求が生まれる。これは体内のニコチンが徐々に減っているために起きるニコチンを求める症状で(体内のニコチンが半減するのに2時間)、禁煙への第1歩になると同時に乗り越えなければいけない壁ということになる。これは脳がニコチンを必要としなくなるまで続き、多くの人が挫折する壁となる。ちなみに喫煙欲求には波があり、個人差こそあるものの概ね1~2分(長くても3分)である。そのわずかな時間に他のことに意識を集中させる(冷たい水を飲んだり運動したりする)ことで禁煙に大きく近づく。

禁煙2日目~3日目には血液中のニコチン濃度が急激に減少したことによって一層の喫煙欲求が生まれる。先述したようにニコチンは2時間で半減する、そのため睡眠中にニコチンが抜けてしまった分を補おうとして寝起きの一服を求めるようになる。寝起きの一服と似たようにニコチンが減っている状態が続くことが原因で、脳が刺激を求めてニコチンを強く求めるようになる。喫煙者の体内からニコチンが完全に抜けきるまでには概ね2~3日かかる。初日より強い衝動に襲われるが、喫煙欲求は3日以内にピークを迎えて5日すればほとんどの人が苦痛から解放される。

上記の期間を過ぎると味覚や嗅覚が正常に戻るようになり(舌や鼻の粘膜に付着したタールが無くなる)、胃腸の働きが改善されることにより(ニコチンは胃腸の粘膜の血流量を減らして消化吸収を悪くする)食欲が増すようになる。本格的な禁煙の効果が出始めるのだ。

禁煙1週間~2週間は最も気の緩みが発生しやすい時期で、最も禁煙に失敗しやすい時期となる。実際に禁煙に失敗した人は1週間~2週間の間が28%と最も多い。ニコチン自体は2~3日で体外へ排出されるのだが、ニコチンと結合していたアセチルコリン受容体がアセチルコリンの刺激のみを求めるようになるまでは2~3週間かかる。ニコチンが体内に存在しなくても脳はニコチンを欲しているということになる。禁煙当初はある種の意思の力で欲求を抑えることが出来るが、時間が経ち緊張感が無くなることで喫煙欲求に負けてしまうことが多い。

対策としては食事を軽く済ませること(食欲が増して食べる量が増えてしまいがちだが、満腹感は喫煙欲求を刺激する)・睡眠をしっかりとること(眠気が正常な判断を阻害するため、2週間は出来るだけ多くの睡眠が必要)・断酒すること(アルコールは喫煙欲求を刺激するだけでなく、正常な判断も阻害する)が効果的だ。断酒に関しては酒の席においては周囲に喫煙者が多いため一層の注意が、理想は断酒が良い。

禁煙2週間目を過ぎる頃には禁煙欲求が治まり自律神経も正常に戻るだけでなく血液循環も回復する。アセチルコリンが正常な働きを取り戻すことによるもので、結果的に寝起きが良くなり体が軽くなったような感覚になる。

禁煙1ヶ月目にはほとんどタバコを吸わなくても平気になるが、行動記憶と呼ばれる習慣のようなものが残っている。タバコの味や効果を脳が記憶しているために起こる現象で、対策としては喫煙時と同じような生活習慣を繰り返さないことが大事になる。
無理な仕事による過剰なストレスを避けることや、喫煙に使っていた時間で運動をするといった刺激が必要になる。

行動記憶が消えるまでには個人差があるが、大体の場合3ヶ月必要とされている。そしてここを乗り切れば晴れて禁煙成功となる。
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増税とタバコの同時値上げ、それによる禁煙挑戦者の増加。禁煙外来が難しいと考える人は自力の禁煙に挑戦すると良いかもしれない。しかし禁煙は1日や2日で出来るようなものではないことを理解し、地道に続ける覚悟が必要になってくる。