「形あるものいつかは壊れる」。
この言葉は地球に存在するものすべてに当てはまり、もちろん我々人間もその言葉通り日々寿命に向かって突き進んでいる。
そんな人間の寿命はどのような要因で決まるのか、今も答えが出ないその問題にはいくつかの仮説が立てられている。その中の1つがテロメア、別名命の回数券である。
スポンサードリンク
不老不死の伝説が世界各地に残るように、人間が老いる理由は古の時代から考えられていたようであるが、21世紀になった現代でも正確なメカニズムは解明されていない。
そんな中、人間が老いる理由にはいくつかの理由が考えられるという。
個々の細胞が老化することで結果的に体全体の細胞が老化するという体細胞老化説、老化は個人の遺伝で決まるという老化プログラム説、生きている間に細胞死や異常細胞の増殖によって老化が発生するというフリーラジカル説、他にもDNAが徐々に損傷するという説や細胞が突然変異を起こすという説等様々である。
そんな中最も有力視されている(確実視されているわけではない)説がテロメア説と呼ばれるものだ。
人間の体を構成する細胞を構成している染色体の両端にはテロメア(染色体末端粒)という部分がある。テロメアは細胞分裂の際に他の部分と同じように複製されるのだが、その構造を完全に複製することが出来ず、細胞分裂の回を重ねるごとに少しずつ減っていく。徐々に減っていくテロメアが完全になくなってしまった場合には細胞は分裂をすることが出来なくなり死滅するという説だ。
このことからテロメアは残された細胞分裂の回数を調べることが出来るかもしれないと考えられ、細胞分裂=寿命と解釈した場合には命の回数券と表現される。
しかしテロメアの減少だけで人間の寿命のメカニズムが解明されたわけではない。テロメアの減少が寿命に深く関わっている可能性は0ではないかもしれないが、老化という現象にスポットを当てた場合、その原因はテロメアだけではないからだ。
細胞分裂によって減少するテロメアであるが、その減少幅は細胞の種類ごとに違う。例えば、神経や心筋の細胞は分裂を繰り返してもテロメアの長さはほとんど変わらないことで知られている。
また脳の神経細胞が減少することで発症するアルツハイマー病の原因ももテロメアの減少で説明することが出来ない(仮にテロメアの減少が原因ならばほとんどの人間がアルツハイマーになるが、実際はそうではない)。
あくまで寿命は複数の要因が重なり合うことで決まるということなのか。
現時点でテロメア以外に寿命に影響を与えているのではないかとされる物質は、細胞外基質とされている。この物質はコラーゲンを主成分としていて、時間と共に老化していく。老化情報が細胞膜に伝わって体全体の老化に悪影響を与えるのではないかとされている。
他にも人間は生まれてから死ぬまでの間に酸化を続けているという説が存在するなど、老化や寿命のメカニズムは完全には解明されていない。
仮にこの事実が判明した場合、死という絶対的概念に一石を投じる出来事になるだろう。