森林や滝などを歩きながらマイナスイオンに癒される。そんな言葉を聞いたことがある人は多いかもしれない。
しかしマイナスイオンとは何かと問われた時にはほとんどの人が首をかしげてしまうだろう。
何故ならばマイナスイオンという言葉はただの抽象的な概念でしかないからだ。
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しかし、そんなマイナスイオンには体に良いという科学的な根拠が無い。
今でも稀に見かける場合があるマイナスイオンの効果をうたっている製品は、そのほとんどが根拠の無い効果を宣伝しているということになる。最もマイナスイオンをうたい文句にしていた製品の多くはブームの終焉と共に姿を消したが、今もその存在を信じている人も多い。
そもそもマイナスイオンとは何なのか。
イオンとは電気を帯びた原子や分子のことで、プラスの電気とマイナスの電気を帯びたイオンが存在する。つまりマイナスの電気を帯びたイオン=マイナスイオンは存在するのだが、このイオンは正式には陰イオンや負イオンと呼ばれ、マイナスイオンとは呼ばれない。実際にマイナスイオンという言葉は近年作られた和製英語であり、体に良いという科学的な証明もなされていない。
マイナスイオンによって体調が良くなったと感じた場合、それはただの思い込みである可能性が高い。
その一方、森林浴による体調の変化には科学的な根拠があるようだ。
そもそも森林浴は1982年に林野庁が実施した実験で、2日間森林の中を歩いたり風景を眺めた人間のストレスホルモンを計測した結果、都会で生活している人間と比べてその濃度が40%ほど低いことが判明し、副交感神経(リラックスした時に活発になる神経)の活動も活発になり血圧が下がるなどの効果が見られることが明らかになっている。
日本医科大学の実験では森林浴によってNK細胞(がん細胞を攻撃する細胞)が増加して活性化するという報告があった(NK細胞は森林浴以外の要因でも活性化するので一概に森林浴の影響とはいえない)。
森林浴とマイナスイオンを混同させることで一種のマイナスイオンブームが起き、根拠の無い噂に右往左往しただけでなく、実際に効果を感じたという人までいた。
マイナスイオンは健康を良くする効果ではなく、人間の思い込みの効果を証明するものとなっている。