北太平洋に浮かぶ火と氷の国ことアイスランド。
この国の裁判で奇妙な判決が下ったことが話題になっている。
大統領亭と首都を結ぶ道路建設に反対する団体が「道路建設によってそこに棲むエルフ(妖精)の文化が破壊されてしまう」と裁判所に提訴したところ、なんと訴えが認められたという。
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というのも、アイスランドでは古くからヒドゥンピープルと呼ばれる生き物が存在すると信じられているからだ。
ヒドゥンピープルは人間でも妖精とも異なる不思議な生物で、小高い丘や険しい岩山棲んでいるのだが、その棲家は異空間となっていて人間の目には見えないという。
不思議なことに、アイスランドではヒドゥンピープルに遭遇したという人が実に大勢いる。同国で共産党を立ち上げた政治家であるドリックヴィ・エミルソンもその1人だ。
エミルソンの手記によると、彼が14歳の頃、人家から少し離れた山の中で放牧した羊と共に仕事をしていた時に誤って岩の割れ目にはまってしまった。助けを求めても周囲に人はいない。徐々に日が暮れて気温が低くなっていくことに絶望しかけたその時、何処からともなく1人の少女が現れてエミルソンを助け出してくれたという。なぜ山の中の岩場に少女が1人でいるのか不思議に思った彼は少女に何処から来たのか尋ねた。少女は「リテンスタマー農場から来た」と告げながら少し離れた場所に位置する古い農家を指した。そんな場所に農家があったことに驚いたエミルソンに対し、少女は自身がヒドゥンピープルであると明かした後に家の中に消えてしまったとしている。
一国の政治家がこのような記録を残していることからも、アイスランドでは人間と不思議な存在の教会が他国に比べて少ないと考えられる。驚くべきことにヒドゥンピープルについて学ぶエルフ学校のような機関も存在している。その校長曰く、これまでエルフやヒドゥンピープルを見たという700人の人間と会見し、その中の200人は実際に会話をしたり親密な関係を築いたことがあるという。
また、アイスランドでは住民の半数以上がヒドゥンピープルやエルフの存在を信じている。その一方で急激な近代化の影響を受け、多くの建設工事や公共工事が行われたことで周辺の自然が切り拓かれた。人間と自然を共有する関係にあったヒドゥンピープルやエルフの目撃情報は減少傾向にあるようで、自然破壊=人間と超自然的存在の双方を脅かすという考えが根本にあるようだ。
アイスランドでは民家の庭に妖精用の家を置くこともある。このように人と超自然的存在が密接に関わっているのだ。
一見するとふざけた判決のようだが、事実を紐解いていけばその国の文化が見えてくる興味深いものだ。裁判所がエルフの存在を認めたというよりは、人々の信仰や文化を尊重した判決と考えるべきだろう。