サッカー大国ブラジルで開催される2014FIFAワールドカップ。
世界で最もサッカーが盛んな国の1つであり、世界で最も素晴らしい実績を残してきたブラジルでの開催ということで当初は国民総出の盛り上がりが予想されていたのだが、ここに来て開催に反対するデモ等が相次いでいる。
まさかのサッカー大国でのワールドカップ反対。原因には経済成長によって国内に格差が広がっていることが指摘されている。
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ブラジル国民のサッカーに対する情熱は凄まじいもので、2014年のワールドカップではブラジル代表の試合当日を国民全体の休日(試合が気になって労働生産性が低下することや事故が増えることが予想されるため)に指定するほどの熱狂ぶりで、まさにサッカーが文化の中心になっていると表現しても過言ではない。しかし、そんなワールドカップに反対を唱える人が多く存在するという意外な事実がある。
中国やインドと並んで今後経済成長著しい経済成長によって世界的な大国となる可能性を秘めているブラジルでは中国と同じような資本主義経済特有の大きな格差社会が広がりを見せ、各地で高所得者が増える一方で職に就くことが出来ずに犯罪に手を染める者達や貧困にあえぐ者達が目立ち始めた。
ワールドカップに反対する人々の言い分は、ブラジル国内で貧困に苦しむ人々に対して何の対策や保障もないままで多額の税金をワールドカップに投資していること、公共事業による雇用創出が長期的に見ると一時的なものでしかないことである(各地でデモが発生し、なんとブラジル代表のバスが襲撃される事態となった)。
特に税金が社会保障とは違う方向へと使用されることに対する反発が大きいようで、ワールドカップ観戦に訪れる外国人観光客が落とす金銭も、その行方のほとんどは一部の宿泊施設や観光名所に限られると見られ(治安が懸念される各地に観光客は足を運ばない)、肝心の貧困層には縁の無いワールドカップ特需となっている。
貧困層は犯罪に手を染め刑務所と一般社会を行き来する生活、そんな人間の生活するスラム街に近寄らない富裕層や中間層。ブラジル政府の発表では徐々に貧困層が減少しているとしているが、ワールドカップ反対派は速やかな現状打開を求めているようで、長期的な視点に立つ政府との意見の隔たりは埋まらないだろう。
ちなみに、ブラジル全体の所得や生活水準が高騰するとそれに反比例してサッカーチームが弱くなるとされている。
元々ブラジルサッカーはスラム街等での生活の中で(裸足に凸凹の地面)身に着けたテクニックや食べ物をかけた勝負等で培ったハングリー精神がその根本にある(教養を持たない人間が一発逆転出来る唯一の手段でもあった)。生活水準や教育制度が確立された場合は子供達のサッカーをする時間が必然的に減ることになるからだ。
ブラジルでの格差の広がりは、今後経済発展を遂げる途上国を写す鏡となるだろう。