我々人間は毎日睡眠を取る。
体に溜まった疲労を解消するという意味でも睡眠は必要不可欠な生理行動なのだが、実際には必ずしも睡眠という方法で疲れをとる必要はないのではないかという声もある(睡眠の目的は疲労を取ることではないという意味)。
では、なぜ人間は睡眠を必要とするのだろうか。
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確かに人間の生活では精神的に肉体的に多くの疲労が溜まるが、本当にこれほどに長い睡眠時間が必要となるのだろうか。そして人間は何のために眠るのだろうか。
現代のように科学が発展し、人間のライフスタイルが多様化する以前は睡眠に関して深く考える必要は無かった。狩猟を中心とした生活をしていた人間にとっては日のある時間帯に狩りをして肉体を酷使し、日が沈むと暗闇の中での仮は困難であることから体を休める時間に当てるというサイクルが自然と行われてきた。
それが現代のように科学が発展したところ、人間の生活時間は24時間となった。同時に家の中には常に食料がありすぐに空腹を埋めることが可能になった(遠出をしなくても店から食料を調達することが容易になった)。社会全体も世界中が繋がり、24時間動くようになった。そんな中で人間が夜に眠るという生活は失われていったことで日常生活に悪影響を訴える人々が増え(睡眠不足)、睡眠の科学が注目されるようになった。
脳の研究が解明されていくと記憶だけでなく意識や精神という脳が司るものがわかるようになり、脳には思ったよりも多くの情報と負荷がかかっていることがわかり、大脳を休息させる必要性があるために睡眠が必要だと考えられるようになった。
活動と休息は全ての生物に見られる現象であるが、睡眠という現象は大脳が発達した動物にのみ見られるもので、大きな脳を持つ動物ほど睡眠の重要性が大きいことが明らかになった。
人間の場合、大脳はニューロンと呼ばれる興奮性細胞の塊でありその活動には体調の酸素を必要とする。そしてニューロンの増殖は成長過程で止まってしまうので、限られた数のニューロンを休ませながら使う必要性が出てくる。これらを実現する手段が睡眠である。眠くなるとあくびが出る理由は、酷使されて酸素不足に陥った脳が深呼吸によって酸素を取り込むことを要求した結果なのだ。
このように睡眠は大脳にとって必要不可欠なもので、同時に人間が活動するため(生きるため)にも欠かせない存在であることが明らかとなったのだが、これで睡眠の存在意義が解明されたとは考えられていない。それは睡眠には大脳を休ませる以外の役割があるのではないかと考えられているからだ。
その役割とはレム睡眠(短く浅い睡眠)が学習効果を持っている可能性があるという点だ。特に成長期の時期には日々の経験を情報として処理する脳の回路確立に役立っているとされ、新生児に多くの睡眠時間が必要な理由がまさにこのためだとされている。
単に体を休めるだけならば横になって動かなければそれで済む話。睡眠は単に休んでいるだけではないのだ。