タバコを巡る訴訟で歴史的な判決が下されたことが世界中でニュースになっている。
夫が長年の喫煙が原因で肺がんを発症して死亡したことにはタバコ会社に責任があるとして、女性がタバコ会社を相手取って訴訟を起こしていた裁判で、なんと2兆4000億円の賠償を命じる判決が下ったというのだ。
日本では考えられない裁判。アメリカと日本では少し事情が違うようだ。
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タバコが原因の肺がんで死亡したとしてタバコ会社が訴えられ、なんと2兆4000億円という小国の国家予算に匹敵する賠償が認められたのだ。
多くの日本人は、訴え自体が非常識であるといった意見や、そもそも喫煙による病気は自己責任であるので訴訟を起こすこと自体がおかしいといった意見を持っているかもしれない。しかし、今回の一件は日本とアメリカの裁判に対する認識の違いというほかない事実がある。
そもそも日本人にとって訴訟という言葉はあまりピンと来ないだろう。仮に隣人に訴えられたとしたら人生最大の一大事となる人が大半だ。しかしアメリカではそんなことは無く、隣人に苦情を訴えるような軽い感覚で訴訟(裁判)が起きるのだ。
今回の訴訟ではタバコ会社が喫煙者に対する警告を怠ったことが争点となったようで、日本人の感覚ではタバコを吸う以上は本人に当然健康への害に関する知識があるはずと考えられるが、アメリカではタバコ会社が警告をしていたかどうかという点が注目される(なのでアメリカではあらゆる製品の注意書きに日本では考えられないような文言が並んでいる。例・車のシートを掛けたままドライブしないでくださいetc)。同じような訴訟として、マクドナルドのドライブスルーで買ったコーヒーをドライブ中にこぼして火傷を負った女性が多額の賠償を勝ちとった事例がある。
日本と最も違う点は、懲罰的損害賠償の存在だ。
アメリカでは懲罰という意味で損害賠償に多くの額を重ねることがある。日本での損害賠償はあくまでも損害に対する賠償という範囲に限られるのに対し、アメリカでは被告への罰則という意味を込めて金銭を損害賠償に上乗せするという形を取っている(日本では懲罰としては刑法上の罰則がある)。
日本では非常識にみえるこの訴訟は、アメリカ目線ではあくまで多額の賠償を勝ち取ったごく普通の訴訟なのだ。
そしてアメリカは判例法主義であることを考えると、今後同じくタバコによる健康被害を訴える訴訟が相次ぐ可能性がある(飽和している弁護士にとっては訴訟の種が増えていいことずくめ)。
タバコ会社側は賠償額が常軌を逸しているとして異議申し立てを検討しているという。